shionの日記

日々見つけたものを適当に軽く綴ってみたいと思います。

歴史好きにおススメしたいエッセイ/山内昌之著「鬼平とキケロと司馬遷と」

本好きの人にも、そうでない人にも、本を読む楽しさを共有してもらいたい。「グーテンベルクの森」シリーズは、そんなコンセプトから制作をされた作品集。
そしてこのプロジェクトに召集された1人が、この本の著者・山内昌之氏である。
ウィキペディアで検索してみると、中東・イスラーム地域研究及び国際関係史を専攻する歴史学者であるという。
数々の著作を見ても、難しそうなタイトルがズラリと並んでいる。
もし本屋で見かけたとしても、手にする機会など殆どないのではなかろうか。
憶測ではあるが、著者の作品の中ではこの本が最も読み易く、最も簡単な内容に仕上がっているに違いない。

 

著者の感想や意見を交え、歴史を楽しめる本を紹介している。
いわば読書感想文集のようなエッセイなのだが、古典的なものから現代風、さらには国内に限らず海外の歴史にまで幅広く紹介されているため、歴史好きの好奇心をより深く刺激してくれるのではないだろうか。
歴史に興味のある人ならば読んでみたくなる本が必ず1つは見つかりそうである。

 

ただ、当てられたスポットの幅が広いだけに全てが読者の興味をひくわけではないのかもしれない。
実際私も海外の政治や宗教の絡んだ項目では、基礎となる知識に乏しいため一文一文が重く、言葉がただ目の前を通り過ぎていくような読み方しかできなかったのだ。
そういった内容がちょうど作品の真ん中へんにあったので、何とか長いトンネルを抜け出し一冊を読み上げられたように思う。
ある意味してやったりな気分なのだ。
その分好きな項目では大いに共感し、時には反論し、また発見もさせて貰った。
本を媒介として著者と会話をする事で、好きなものを色々な角度から見つめ直すキッカケをいただいたようだ。
もし著者が専攻している分野で書き上げていたのなら、このような発見はなかったのかもしれない。

 

◾️最後に

エッセイでは著者は語り上手なのである。
その中で一方的に語る著者もいれば、読み手の意見を引き出してくる著者もいる。
おそらく山内昌之氏は後者の方なのだろう。
挑発にも思える言葉で誘い、反論を求めるのだ。
しかしそれは、一人で本に噛り付いているだけでは得られない新鮮な刺激と思う。
普段自分の好みやレベルに合った本ばかり読んでいると、時折マンネリしてしまう事がある。
そんな時に冒険するにはちょうどいい刺激の作品なのではないだろうか。

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